たまに何でもない日を記念日にしようと我ながら気持ち悪い思考をする時があってでもそれは自分の本来の誕生日かもしれなかった。
目覚めたら新八と神楽がいてそいつらは気持ちよさそうに眠っていて時折定春の尻尾がパタパタと揺れる音がする。新八も神楽もやけに俺との距離が近くて俺は今まで横たえて眠っていたらしい。腹には少し生温くなった包帯が巻かれている。でも湿って気持ち悪いということはなかった。新八の包帯を巻く手付きを思い出す。この綺麗な巻き方は新八だ。そしてこの肩に巻かれた包帯を拵えたのはきっと神楽だ。水の張られた桶が目に入り自分は高熱を出していたのだと悟る。喉が渇いていた。起き上がるかこいつらのどちらかを起こして水を取ってきてもらうか思案を巡らせるとすぐ脇に置かれたペットボトルに気が付き迷いなく手が伸びる。そしてやや苦笑した。何回目なんだろうな、と思った。こういうことに気が利いて慣れてしまうほどの回数だと思った。新八か神楽のどちらかが置いたペットボトルのおかげで、どちらも今起こさずに済んだことにほっとしていた。そんな自分の心境に妙な気持ちを感じた。起こしてやりたくなかったし起こしたくなかった。今の顔を見られたくなかった。きっと情けないツラをしている。よりにもよってこういう日にあの時から見る夢を見た。
起きた時、二人がいて、本当にほっとした。
「ん、」
「あ」
「あれ……あ、銀さん起きたんですか」
「んんんん〜……ふわぁ、銀ちゃん、おはよう」
「おう、はよう」
「いつの間にか寝ちゃってたな……いつ頃起きましたか」
「ついさっきだよ」
「さだはるぅ、朝アルよ〜」
「わぅん」
「ばっか、夕方だっての」
新八ィ、腹減った。そう言うと、何か食べますかと返ってくる。食べたいものを考えながら、神楽のひどい寝癖を手で直した。
誰かと生きている。
違う体温がすぐそばに三つも存在している。
記念日にしなくていいのだろうか。
なんでもない日だった。