今日は野宿だ、と、誰からともなく理解して、腰を下ろした。それから、半ば無意識に、互いの距離を詰めて、身を寄せ合うようにして、凭れかかって眠った。
真ん中は銀時だった。手を繋ぎこそしなかったが、互いの体温を肩や腕から感じて安心を求めた。最後の一匹は、神楽が大切に包み込んで持っている。みんな一緒だ。みんな生きて、今を生きている。
新八と神楽の肩をぎゅっと抱き寄せて、しばらくしてから、ぽん、と優しくたたいて銀時は腕を離した。皆無言だった。
背をつけた壁の冷たい温度が徐々に馴染んでいく。寝息がやがて聞こえたかと思ったら、ふいに誰かが意識を覚まして、また目を閉じる。
神楽が、一度、やさしく腕の温度から離れてそっとどこかへ行ったのを隣にいた銀時も、新八も気が付いていたが、何も聞かなかった。少しして神楽は戻ってきて、また寄り添うように座って、ほんの少し身じろぎをした後、また眠りについた。
新八は、一度さらりと髪を撫でる感触を、忘れないように覚えた。銀時は、隣からじっと見つめる視線があることに、気付かないふりをした。神楽は、小さくいつもの優しい声が、二人の名を呼ぶのを聞いた。何時間が、何分が、通り過ぎて、夜が朝を連れてくる。三人とも、解っていた。
きっと、これが、最後の夜になると。
夜が明けねばいい、夜が明けねばいいのに。
連れて行ってしまう。嗚呼、最初から知っていた。
陽の光で起きた新八は、「おはようございます」と、いつも通りの挨拶をした。
銀時は夢を見なかった。
そうして三人は身支度を済ませてから、万事屋に向かって歩き始めたのである。