それにしても豪快な飲み方をする男だ。見ていて気持ちが良いくらいに一口で多く飲む。
真選組局長、お妙のストーカー、色々な側面でこの男を見てきたが、近藤勲という彼個人の内面を気にしたことは一度もなかった。ただ上記二つを取ったらこいつにはほぼ何も残っていないような気がする。あとはすべてゴリラだ。
「おい万事屋、今なんか失礼なこと考えてなかった?」
「見れば見るほどゴリラだよなお前」
「ちょっとォ!?」
小さな屋台でたまたま隣り合わせになって、どういう訳か話が弾んだ。仕事の話を聞くに、こいつも色々と苦労しているらしい。も、というのはおかしいか。いやおかしくない。どこの部下も勝手気ままに好き勝手やって滅茶苦茶にして責任については上が頭を抱えるのだ。
それでも好きにやれ、と思っている。奴らが自分自身を信じて行ったことに間違いはないのだと。
組織を束ねるのはいったいどんな感じなんだ。俺は軍の中の、一部隊を率いていたことはあるが。
──そんなに変わりゃしねぇよ。どんなに護ろうとしたって死んじまう奴が出る。
返答が珍しいことをいいことに、新八と神楽がいないことをいいことに、酔って明日には話の内容など忘れるだろうことをいいことに、普段しないような話を振った。死んだ仲間をどう見送ったのか、見送っているのか。
俺はこいつさ、と杯を掲げると、野郎は少し照れ臭そうな顔でいくつになってもまともな顔で見送れないんだと笑った。
目尻が酒以外の理由で赤くなっていることを悟ったのは最初からだった。