毎年と変わらず冬がやってきたかぶき町に、また毎年と変わらずクリスマスがやってきて、一昨年なかなか骨の折れた出来事があっただけにもうサンタになるのはうんざりだと此方がぼやきたいのも気付かずに、神楽が熱心に部屋の飾り付けをしている。
たった一日の行事に無駄金をかけるな、とケチの代名詞のような台詞を言っておいたおかげで、万事屋のロビーはあまりに質素に、あまりに貧乏臭く、折り紙や要らなくなったちり紙で飾り付けられていく。それでも飾りを巻きつける少女の碧眼は街のイルミネーションのように輝き、小さな唇は陽気なクリスマスソングを口ずさんだ。
神楽はこの青い惑星に来て初めてクリスマスを知り、大層気に入ったらしい。どうせこじんまりとしたパーティーしか開けないことは重々承知している癖に毎年楽しみにうきうきとこの日を待つのだ。やることと言えば神楽と新八が自主的にやる部屋の飾り付けと、いつもより少し豪華な夕飯、金銭に余裕があるか材料があれば夕食後のケーキを食べる、それくらいしかないのだが、そう考えると豪華な食事があるだけでも神楽にとっては嬉しいイベントだな、と妙に納得できた。しかし、新八すらこの時期には明確には言わないけれどどこか楽しそうな顔色を浮かべる。子供というのは得てしてそういうものなのだろう。そう結論付けて己の子供時代を回想しようとするが、そういえば自分の幼少期にそういう横文字の類の行事は存在していなかったと思い出す。この時期にした特別なことと言えばまずは冬至、それから間が空いて大晦日にお正月、そんな時代だ。仮にあの時代、クリスマスがあったらどうしたかな、と空想してみると、張り切って「けえき」を手作りしようと腕を捲くる師を想像してそのあまりの違和感のなさに呆れた。あの先生なら、やりそうだ。ついでツリーをセンスなく飾るヅラ、御馳走を取り合っていつも通り喧嘩する自分と高杉を自然な流れで想像したところで、身体に衝撃が加わる。寝そべるソファの揺れた感覚に現実へと引き戻されて、見上げると、ジト目で迷惑そうな視線を向ける新八とバッチリ目が合った。表情を一切崩さずに何かと問えば、今度は呆れと侮蔑の入った視線で応じられる。「銀さんも何か手伝ったらどうですか」
「やだよ、かったりぃ」
「せっかくのクリスマスなのに、いつもと変わらずグダグダしてるだけじゃないすか」
「お前らが好きで忙しなくしてるだけだろーが。銀さんはいいの。そーいうのに捕らわれずに生きていきたいタイプなの俺は」
てきとうな返事で動きたくない意思を示せば、それを正確に汲み取ってくれたよくできた眼鏡は、溜息を一つ吐いて掃除機をかけることに集中し始めた。夕飯の買い物は昨日済ませてある。この材料なら一昨年のマロニー鍋よりは遥かにマシな料理が出来上がるはずだ。元来器用な腕を鳴らすのはそれらを調理する時で充分だろ、と勝手に考えて、暫く惰眠を貪ることに決めた。