「お前を愛してるよ」

「川の下の子です」
加州清光はそう言うが実際それがどれだけ加州清光にとって大事な話になるんだろうか。彼は修行に行って、帰ってきてから万屋に行くと「俺も昔は夜店に売られてたんだよな」と小さく呟く。彼の出自と彼の可愛がってもらいたいという想いが繋がっているのは明らかで、彼は綺麗であれば可愛がってもらえると思っているからこそ可愛くあろうとしている、と、政府からの通達にも記載してあった。そういう刀である、と。彼は自らの名前の前に自分の出自を明らかにする子であった。俺はそういうところで生まれた刀である、と自分で最初に言う子であった。
かの池田屋で欠けた彼が最後どうなったかは歴史の記録にはないが彼の様子を見るに手放されたのであろうことは想像に難くない。修理不可として返された彼は今でもその言葉に怯えているのではないかと思う。ここ本丸では資源さえあれば完全に修復することが可能だ。そこは安心して欲しい、と思う。きっと現に安心しているのではないかと、これは希望も含むが、そう思っている。
手放すわけがないではないか。こんなにも愛おしいのに。

「あーるじ、何の話してんの?」
「やっ、加州清光さん!」
「んー? こんのすけどうしたのそんな赤い顔して」
「いやなに、お前の話をしていたんだよ」
「えっ、……ほんとに? ……へへっ、そっか」

うーれしぃなぁ、と彼は笑った。