『結果』が大事だと思う。
だから、結果をわざわざ探しにいった。
「ふふ」
リドルが微笑む。さっきのケーキを口に入れた瞬間の笑みとは違う、他の理由がありそうな笑い声。
「どうしたんだリドル」
「いや、ね……トレイの変化が見つけられて、嬉しいんだ」
「俺の?」
リドルは俺の顔を見ず、ティーカップに収まった紅茶の水面を見つめて話す。
「ボクはあの学園にいる間に、随分と自分が変わったと思う。……それはトレイにだってわかるだろう?」
「ああ」
「でも、トレイはちっとも変わってないように見えて……いや、ボクが気づいてないだけだね。でもボクが、気づけなかったのは確かだから」
だからね、今。大事なものをそっと掬うように、リドルが言う。
「ボクがトレイの変化に気づけたことが、嬉しいんだ」
結果が大事で、過程はさほど重要じゃなくて、効率が良ければそれで良い。単純に今度の資格試験の勉強に行き詰まって、集中して他のことに取り組みたくて、それで一番手慣れた動作がケーキ作りだった。だから、それだけだ。
「それがトレイくんの言い訳?」
皿に盛られた料理を綺麗に平らげてケイトが言う。
「……楽しそうだな、ケイト」
「だって、……リドルくんの気持ち、ちょっとだけわかるなぁ」
頬杖をついて、どこか遠くを見つめる。
「キッシュまで、作らなくたってよかったじゃん」
一番刺されたくない言葉を的確に刺されて、笑うしかない。上手くできてるかわからないが。
「使われた、って、いやにならないのか?」
「えーっ! ちょっと、けーくんショック! てかそれリドルくんにも言ってないよね!? うぎられるよ!?」
「うぎられるって何だよ……。……言った」
「……言ったの!?」
心底信じられない、という顔を返される。なんだこの、ずっと続くこそばゆい感じは。
「ハハ……、ちょっとだけ、拗ねさせた」
でも、と続けると、ケイトは真剣に耳を傾けてきた。瞳が、元々垂れ下がった瞳が、さらに優しく垂れてゆく。
こそばゆい。
「『そんなはずない』って、笑われた」
ああ、どうかわらってくれないか、友二人よ。
満足したか、と聞かれて、聞いてきた二人とも、同じほど心満ちた顔をする。俺の内側はもういっぱいで、これじゃ夕飯が食べられるかわからない。