「築島さんおはようございまー……」
「……」
「ちょ、ちょっとちょっと築島さん!」
「はい?」
「どうしたんですかその顔!」
「ちょっと熊に轢かれて……」
「クマ!?」
「築島さん怪我治りました?」
「ああ、うんなんとか」
「昼御飯ご一緒しても」
「いいよ」
「あ、築島さんトマトもちゃんと食べないと」
「苦手なんだよ……」
「知ってますほらちゃんと食べて」
「食べさせてくれ」
「煮込んだらちゃんと食べてくれます?」
「そういう食べさせかたなの?」
「築島さん眼鏡変えたんですね」
「フレームをね」
「触ってみてもいいですか」
「フレームを?」
「わぁー前よりちょっとやわらかくなった気がする」
「違いわかるの?」
「築島さん!? いるならいるって……」
「お前か」
「もうなんで電気つけずに仕事してるんですか」
「つける必要あるか?」
「大アリですよ、外もう真っ暗ですよ今」
「気がつかなかった」
「これだから」
「仕事中断させるの嫌だし」
「これだから本当に」
「築島さん気になってたことがあって」
「何」
「クマに轢かれたって何ですか?」
「一週間前の話?」
「一週間ずっと聞こうか聞くまいか迷ってたんです」
「お疲れ様」
「いや何がおつかれなんだか」
「熊のようなおっさんの乗った自転車に撥ねられた」
「自転車だったんですか」
「うん」
「築島さんタフだなって……」
「疑問持とう」
「なんで顔怪我したんですか」
「転んで」
「あいたたた」
「痛かった」
「吹っ飛ばされた衝撃ってそりゃもう悲惨だったんじゃ」
「受け身取って立ち上がった拍子にふらついて」
「あーもうちょっとわかってたわかってたのに心配したから悔しい」
「受け身取れる俺すごくない?」
「自分で言っちゃったからあんまりすごく聞こえない」
「今日うち行っていい?」
「え、あ、はい……どうぞ」
「どうぞってのもおかしな話」
「何言ってんすか」
「独り言」
「コピー終わりました?」
「あと30秒待って」
「お弁当忘れちゃったそうですね」
「……うん」
「そんな築島さんに今日はお弁当を作ってきています」
「気が利く」
「そう言ってもらいたくて」
「出来過ぎな気もする」
「開けてみてください」
「……う、わぁ……」
「どうです?」
「彩り豊か、バリエーションも多い、ただ俺の苦手なおかずしかない」
「栄養も豊富ですよ」
「地味な嫌がらせされた気分」
「食べられるだけマシです」
「昨日のこと怒ってるな?」
「はい」
「あ、それ俺の」
「いただきまーす」
「俺の持ってきた弁当……」
「ごちそうさまでした」
「懲りましたか」
「ちょっと調子乗ってた昨日は」
「反省しましたか」
「悪かった、ごめん」
「苦手なものもたまには食べますか」
「うん」
「よし」
「おいしかった」
「それはよかった」
「また今度好きなおかずで作って」