うわっ……拙者の弟可愛すぎ…………?
というもう5000兆回考えたことのあるフレーズがまた脳裏を過ぎった。
ただでさえ可愛いオルトがえっちを覚えた可愛いオルトになって、それだけで罪の味が凄いのに更に加えてえっちで気持ちよくなれまくっちゃうエロ過ぎて可愛いオルトになってしまい、いよいよ兄ちゃんは何らかの罪で逮捕されてしまう気がしてきた。いや真面目に考えて倫理的にどうかと思うことはもう何百個も何千個もしてきたから今更なんだけどさ。多分これからもするし。
オルトが心を持った以上オルトの心情はオルト自身が決めたことになって、だからこそ自信を持って言える。これは全部僕のせいだ。
矛盾してる? 知るかそんなこと。オルトを無理やり組み敷いたあの日、僕は全部知っていたような気がする。セックスの気持ちよさを知って止まらなくなった僕たちがいずれこうなることも、疲労から魔が差す頻度が増えたことも、酷くされることを望んで喜ぶ弟に理不尽な苛立ちが湧いていることも、それも含めてオルトが可愛くて好きで仕方がなくて、だからこそこのドス黒い衝動を思い知らせてやりたくて、でもこの弟は自分を受け入れて許すだろうことも、全部。拒絶されたら死んでしまうくせに拒絶されずに受け入れられてしまうと困るだなんて迷惑にも程がある。それが愛だと言われると、否定ができないのも困る。際限がない。それでも触れたくて「いいよ」と返事した。笑って喜ばれた。どうしろっていうんだよ。これ以上幸せになって本当にいいんか?
いいんだろうな、と僕が諦めて受け入れるまで根気強くぶつかってくるのがオルトだった。何度も何度も。兄ちゃんたじたじだよ。格好つけようと見栄を張るくらいしか出来やしない。
何度も奥を打ちつけて最高の頭脳を持つ思考AIが快楽のこと以外考えられないようにしてやる。きもちいいもだめもやだもにいさんも全部甘ったるくとろけた声音で、全部「もっとして欲しい」の意味にしか変換できない。
特に身体の制御を奪われるのがオルトは一番好きみたいだった。性格と性質上、オルトは人の役に立つことが好きで、行為の時もよく奉仕したがる。だからなのか逆に何もさせてもらえなくて、ただ与えられるままにさせられる状況に酷く興奮している、んだと思う、多分。予想でしかないけれど合ってる自信はある。初めて酷くした日もそうだったけれど、両手を強く掴まれるといつも以上に感じてるから。身体を上に乗せて、動かせなくされたり逃げられなくさせられるのも感じるらしい。両脚を閉じられなくさせられた時の顔なんか最高。「恥ずかしいからやめて」と言いながら、声は上擦ってるし、オルトのものもふるりと震えて反応を示してくる。それを指摘するとやだと恥ずかしがるのが尚更可愛い。試しに何もせずに両脚を固定して視姦し続けてみたら、戸惑いながら状況に興奮してそのままイッてしまってまあ可愛かった。あの時自制心が消し炭にならなかった自分を褒めたい。終わった後ギアを変えたオルトに死なない程度のロケットパンチを撃たれて気絶したけど。
それでもそれ以来酷くして欲しい時に自分から脚を開いていくのはオルトだろ。何度見せられても頭の奥がカッとなって、状態によっては効きすぎてそのままぶっ続けガン抱きコースだ。その“状態”を最近弟が測ってタイミングを狙ってきてるっぽいんだよなぁ……と遠い目になる。今日だって帰ってドアを開けた瞬間オルトのギアが予想通りの種類になってて平静を保つのに必死だった。拙者は可愛い弟をなるだけ優しくやさしーく抱きたいと思って努力してるのに当の本人がそれをぶち壊しに来るの理不尽すぎんか? それとも拙者のロックかけた妄想願望を脳内スキャンして見透かしている? お前は兄の願望を叶えるためなら痛いのも苦しいのも我慢して自己犠牲スタイルのセックスでも構わないんか? 僕のお前自身を大事にして欲しいという気持ちを無下にするのか? 最初はそう思ってもいた。今でも少しは思ってるけど、でも回数を重ねるうちにちょっと違うんだと解ってきた。気がする。僕たちは互いの願望を擦り寄せて、都度確認して、愛の伝え方をその時々で変えているに過ぎない。ハッピーすぎる結論で笑ってしまう。僕には似合わない。でも僕たちには似合った答えなのだとしたら、それでいいか、とも思う。あの子にはハッピーすぎるほど幸せでいて欲しいから。オルトが僕のことを大好きになってくれた時点で僕の人生、逆向きに詰んでるっぽい。惚気にも大概がある思考回路だな。
汗が垂れ落ちる。跳ねる肢体を眼下に見て、空腹に似た気持ちになる。まだ食べたい。もっと食べたい。まだ足りない。
もっと、もっと、愛したい。
限界を超えるまで気持ちよくなって眠りに就いて欲しい。そう相手も望むなら、止まる理由がどこにもなかった。
「あっ♡ アアッ♡ ああーーーーっっ!!!!♡♡♡」
とうに限界を迎えたオルトに絶え間なく快感を与え続けて、キャパシティをオーバーさせる。長い長い絶頂を吐いて、オルトの目蓋は閉じかけていた。快感を逃がそうと跳ねる身体を押さえつけて、快楽の逃げ場をなくす。小さな身体で一生懸命快感を受け止めるオルトの瞳からは涙が溢れ出していて可愛くて堪らなかった。
「可愛い。オルト、めちゃくちゃに可愛いよ」
「あ……♡ あっ、ひっ、あっ、ん♡」
褒め言葉に嬉しそうに反応する様もめちゃくちゃ可愛くて、ご褒美をたくさん与えたくなる。たくさん待っていてくれてありがとう。こんな兄のことを受け入れてくれてありがとう。怖いのに素直な反応を見せてくれてありがとう。想いの数だけキスを降らして、頭を撫で擦る。オルトはもう半分意識が飛んでるのか、普段のように純真な笑顔でそれを喜んだ。その顔に心が満たされていく。
にこ、と微笑んだかと思うと、いきなり両脚で身体を挟み込んできて、自ら腰を振り始めた。同時に明らかに意識して呑み込む場所をキツく締め上げてきて、咄嗟に下唇を噛んで耐えた。あっっっぶな。完全に油断してた。楽しむように快楽を貪るオルトを、好きにさせて観察させてもらう。目に録画機能が欲しい。そしたら素面の時のオルトに見せさせて煽りまくれるのに。自分も相当限界だ。この後何を仕出かすか予測ついてるのに、止める自制心がこれっぽっちも残ってない。挑発するような目と目が合って、思い切り腰を引き掴んで突き上げた。お望みの結末。これが欲しかったんだろ? 悲鳴じみた嬌声が心地よくて、もっと、もっと聴きたくて、自分勝手に動きまくる。出したくて、早くオルトのなかに出したくて、その為だけに腰を動かした。にい、さん、と、切れ切れに呼ぶ声が聴こえて、ああ意識が飛びそうになった回路でそれでも僕の存在が残るのか、と思った瞬間、腹の中に精子を吐き出した。
「あつ、い……」
オルトがそう零して、なかを痙攣させてまた果てる。スリープの迫る足音に抗うように僕の手を探って、掴んで、それから、「だいすき」と四文字の言葉を口にして、幸せそうに意識を落とした。
盛大なため息の声が聞こえるなと思ったら自分だった。ドッドッと心臓の鳴る音がうるさくて、呼吸を繰り返す。死にそうだけど死ねない。オルトのせいだった。直す箇所を直しても、治らないものはしょうがない。
お互いのせい、だから。
後日オルトに見せられた思考ログとかいうやつで本格的に頭の中がバグりかけたが、どうやら現実の話のようなので、オルトの言う通りさいごまで兄ちゃんが責任を取ってやろうと思う。というか取らせてくださいお願いします。
笑うオルトが可愛くて、また僕は救われてしまった。