循環的塩水話
「なぁ、」
「ん?」
「どうしているんだろうな」
幾度目かの問いに、わからない、と変わらない答えが返ってくる。お互い暇つぶしに言っているだけなので、深い意味はあったり、なかったりしたりする。
わからない、と答えた方が言う。「少なくともお前は必要だよ」
「じゃあお前は何なのさ」「しらない」
くだらない話をし続けた。その時が来るまでをずっと待った。問いかける方の身体は、まだじくじくと痛んでいる。白い壁一面の無数にある部屋から何処かにあるだろう一室での話。
問いかける方は護られるもの。答える方は護るもの。
でも、問いかける方もこの大きな体を護るもの。
激動が訪れる。今か、と質問者は何もない虚空を見上げた。
「それじゃあ、いってくるよ」
「ちょっと待って」
立ち上がった質問者に寄った回答者は、その頬を拭って髪を梳かした。
「これでよし」
衣服をぱんぱんと払ってぽん、と胸を押す。「いってらっしゃい」「いってきます」
また戻ってくるまでの、少しの間の小さな別れ。
そうして、出発者は外へと飛び出していくのだ。