イツツの物語

プレゼント

膝を抱えている少年を背後から眺めた。目元の腫れているように見える。赤い。顔を上げて部屋を見渡した。壁のないように見えて、実は全て壁である。白い。そんなところに入ってこられたのも、たったひとつドアがあったからだった。
少年の零した涙は、いつしか冷たい涙から温かい涙へ変わっていた。少年の隣へ腰掛ける。
「楽しんでくれたかい」
この手から渡した数個の話。少年は初め聞こえない振りをしていたが、暫くしてこっくりと頷いた。
「大事に、する」
ぎゅっと、己を抱き締めてそう言ってくれた。
少年が青年の姿になり、徐々に自分へと近付いていく。そして、自分の身体は透けていく。
「さて、もうここでさよならだ」
少年のあどけなさを残して目の前の人物は笑む。次に見せてくれるのは、一体何色なのだろうか。